にじいろ奇跡
お父さんは私の頭を撫でてくれた。それが気持ち良くて、一瞬身を委ねそうになった。


「うん。でもありがとう。運んでくれたのは、お父さんでしょう?」

「まぁ、そうだね。沙夜は軽過ぎだ。もう少し食べた方が良い」


お父さんと交わす冗談。夢では無いと自覚する。


「少しづつ増やしていくわ」

「さぁ、旦那様沙夜様、朝食のご準備が整いましたよ」


牧野さんが呼んでいる。お母さんはもう席に着いているようだ。


「はーい!!お父さん早く行こう!!」

「うん。分かった」


新聞をたたんで立ち上がるのを待ってから、私はお父さんの手を引いてダイニングルームに行く。


「フフ。早く食べましょう」


全員が席に着いたのを確認すると、お父さんが手を合わせて挨拶する。


それから私達も同じ様に手を合わせて挨拶をするのが、この家のルールだ。


それから、和やかに会話を楽しみながら、皆でゆっくり頂く。会話のある食事は普段の何倍も美味しい。


「それでね―――」


私の話に耳を傾けてくれる人が居る事、


「沙夜ちゃんはあわてんぼうね」


私と家族の会話が成立する、小さな幸せを噛み締める。


「クク・・・」


この家では笑顔が絶えない。本当良い事だと思う。


家族が居ることが、こんなにも幸せなんだ。と感じた。
< 99 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop