もし明日が見えなくなっても切ないほどにキミを想う。
夜の景色も綺麗だと思う。
満天の星空に、まん丸お月様。
夜の空気も好き。
「送ってくれてありがとう」
慧斗の後ろから降りて、ヘルメットを脱ぐ。
「あぁ………親に言わなくていいのか?」
こんな夜まで遊ばせちまったからな、と常識あることを言う。
「大丈夫だよ。あたし一人だし」
「共働きか?」
「ううん、親、いないから」
物心ついた頃からあたしには親なんていなかった。
気づいたら一人。一生生活には困らないお金だけがあるだけ。
ずっと一人。
「一人?」
「うん」
「親戚とか」
「いない」
「………」
慧斗は、あたしが渡したヘルメットをまたあたしに被せた。そして瞬く間にあたしをバイクに乗せ直すと、反論する間も与えないでバイクを走らせた。
「ちょっ慧斗?!」
叫ぶけどバイクの音にかき消されて、あたしの声が慧斗に届くことはなかった。