僕の初恋(仮)
「結城君は、来ないのかしら」


先生のその言葉に時計を見やれば、開始から既に15分を過ぎている。


「ちょっと確認してくるね」


先生は席を立った。



その事をきっかけに、ある事に気がつく。



・・・俺、真面目じゃね?


夏期講習がグダグダだったからか、たった15分集中して授業を受けてる事が何だか凄い事に思えた。


まあ、勿論
新しい先生相手に我が儘や逃げが利かない事が理由なのだが

一番の理由は、あのうるさい結城が居ないことにあった。



あいつ初日から遅刻かよっ





戻って来た先生の言葉で打ちのめされた。


「結城君、今日お休みだって」


初日から休んでんじゃねーよ!



「えぇ、て事は、先生とマンツーマンかよ」

思わず言葉に出してしまい、ハッとする俺に
先生は分かり易い程の作り笑いを湛えた。


「良かったわね、先生を独り占めだなんて」




クールな見た目によらず、ドッキリな言葉を吐いてくれるな、
この先生・・・


一瞬でも勉強とは違う方向に『独り占め』を想像してしまった自分が情けない。
< 18 / 50 >

この作品をシェア

pagetop