僕の初恋(仮)
「こんにちは」


先生の明るい挨拶に、俺は、
ーちわ。と短く返す。



「宿題してきた?」


「先生、量多いよ」


皮肉にも、文句だけは素直に口を出る。


「そんなこと無いよ、ちゃんと出来てるじゃない」


テキストにいくつもの赤い丸を描く、先生の指先を見つめた。


白くて、透き通った肌。

流石に、おばちゃん先生達とは違うな。



「今日は何だかオシャレだね」

先生の言葉にドキリとする。

「こんなんしか持ってなくて」

「そうなの?中々、佐藤君に合ってると思うけど」

先生は俺の服を見、俺の目を見た。

さっきまで勉強モードだったのに、先生のその一言に、急に鼓動が高鳴る。


「自分で選ぶの?」


「そりゃ勿論。親の選んだのなんか着ねえし」


そうなんだ、
と呟く先生に目を向けられずにいると・・・



「こんちわー」

マヌケた声で、どかりと隣りの空席に座り込む影。


「お、結城」

「よっ」



「もしかして二人とも、同級生?」


学校は違うよ
と答えれば、先生は

「仲良しなんだぁ、」

と俺らを交互に見つめた。



「そんな事ねーよな?」

結城の言葉に

「ああ、そんな事ねえ」

と答えれば、


「っ、何それ」


と水野先生は可笑しそうに微笑んだ。


多分、初対面である結城ですらも、俺と同じで先生に見とれてたんだと思う。


二人で一瞬動かなくなった。
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