僕の初恋(仮)
春から東京の大学に通う兄貴は、大学近くのアパートで一人暮らしを始める。


運動以外は何でも容易にこなす兄だから、きっと一人暮らしも大丈夫なんだろうな。


俺は、料理が全く出来ないから一人暮らしじゃ生きていけない。



車の中では酔うから本が読めない。

窓の外の冬景色を眺めながら、隣りで眠る兄貴の大学生活を想像した。

兄貴は18歳。

よく考えたら、先生とさほど変わらない年齢だ。


「東京かぁ」


東京は雪が降らないと聞いた。

きっと、この目の前とは違う景色が当たり前のように広がっているのだろう。


先生も兄貴も、都会に住むという理由だけで何だか遠い存在な気がした。

田舎に住んで、母親の元で暮らしている俺はやっぱり子供なんだ。


いつものごとく、大人への憧れがぼんやりと浮かんだ。
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