僕の初恋(仮)
新潟県の日本海側は、人間一人すっぽり埋まってしまう程の大雪が降る。

弥彦山近くに住むばあちゃんの家は、毎年信じられない程の雪が積もり、男手が帰れば当然の如く雪かきが第一の仕事になる。

単身赴任中の父さんは仕事が忙しくて帰って来れなかったから、今年は俺と兄貴の二人でこなす。



さっき着いたばかりの俺たちの車も、いつの間にか白い雪を厚く被っている。

雪を掻いても掻いても、振り続ける雪が止む事はなく、それは雪かきが終わらない事を示す。


手先を真っ赤にして、手袋をしているのに感覚が無くなる位没頭した。





一面の白に囲まれていると、俺は無心になれる。

雪と言うのは全く無音で。

はたと手を止めて周りを見渡せばまるで異世界。

ただ音が無いんじゃない、しんと静まり返った白の世界は独特の雰囲気で時間を忘れさせる。


俺はきっと、雪の中で何時間も居座れそうだ。


この幻想的な世界が好きだった。


ああ、綺麗だ。

雪って、白って、綺麗だ。

俺は手に雪を取り、ぺろりとそれを口にした。



雪が好きだった俺は雪かきが嫌いじゃなかったが、兄貴はどうやら苦手なようで。


俺と違って白の世界に目を向けることなく、早く雪かきを終えようとただひたすら下だけを向いていた。








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