僕の初恋(仮)
「もう中に入っておいで」


母の声を聞いて、俺たちは暖かな家の中へと滑りこんだ。


「うー寒かった」

「俺は暑い」

「だって兄貴めちゃめちゃ真剣だったもん」

「お前はよそ見し過ぎなんだよ。どっか違う世界行ってたし」

「いいじゃん、楽しいんだもん」



ジャンパーを脱いで玄関脇に掛け、寒い寒いと手を擦り合わせながら居間に行くと競るようにしてこたつにもぐり込む。


体は暑いと言う兄貴は手足だけをこたつに突っ込んで悴(かじか)んだ指先を温める。


俺は雪の中立ち止まってぼーっとしていたのですっかり体は冷えていた。

猫のように体を丸めて首だけ出して横になった。





「今年もすごかったでしょー」

ばあちゃんがミカンとお茶を持って現れた。

「いつもより多い気がした」

「今年は降り始めが遅かったから、その分一気に降った感じだで」


濃いお茶を啜りながら、こたつでミカンを食べる。

まさに日本人の冬って感じだ。



「もう少しで夕飯できっから」



ばあちゃんは台所へと戻っていった。


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