僕の初恋(仮)
兄貴はテレビをつけて、夕方のテレビ番組をぼんやり見つめる。

はじめは一緒に眺めていたが、どうもこのおじさんとおばさんーいやどちらも芸能人なのだがーの散歩みたいな番組は面白いと思えない。


俺はこたつを這い出して隣の部屋へ行き、バッグを漁った。


何冊もの本を持ってきた中で、やはり一番目を引くのは赤い表紙の本。


昨日は元々読んだ、30ページ前後まで読み進めた。


きっとこれから、主人公21歳女子大生の恋が見えてくるのだろう。


俺は迷わずその本を手に取り、再びこたつの部屋へと戻った。





「お前また本か?何の本?」


俺の手の中の鮮やかな赤を見つけた兄貴は興味を示して来た。


「これ友達に借りた本」

「へー、推理小説?」

兄貴は俺が大好きな分野を口にしたが、それとは全く違う恋愛小説だという事を正直に言う事が少し憚(はばか)られた。


「うん、そんな感じ」


俺は適当に言葉を返して本に集中した。

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