僕の初恋(仮)
〜再会〜

初詣で見た景色

始まりの朝は雪で始まった。

それほど強くは無い、ちらちらと可愛げに降る雪の中、家族並んで初詣へと足を運んだ。


神社の境内には数え切れない程の人、人、人。

それは毎年の事だが、一年に一回のこの光景は何とも言えない懐かしさが漂う。


傘を差す人も居れば、フードや帽子で事足りるとする人の姿も多い。

授与所の前とお賽銭箱の前は一段と酷い人だかりだ。

母さんもばあちゃんも人だかりは嫌いではないようで、混んでいるにも拘らずお参りの為にお賽銭箱行きの列に並び、俺も続いた。

兄だけは心底嫌そうで、携帯をいじりながら肩を窄めた。



並んでから20分くらい過ぎたところでようやく順番が回ってきた。

自ら貯めた、お小遣いの小銭二十五円を弧を描くように賽銭箱に投げ入れた。

兄貴は同じく二十五円を、投げるではなく、優しく淵に沿って転がした。

二十五円にしたのは、「二重(二十)にご縁(五円)がありますように」という意味があると聞いたからだ。

手を合わせて、何を願おうかと今更考えだす。

後ろで並んで待つ人の事もあり、急かされている気分だ。

(えーっと、水野先生が担当でありがとうございます。今年は水野先生が担当になりますように)

謙虚に感謝をした後で願い事をすれば何だか叶うような気がしたのでそうした。

神様っていうのは嬉しいもので、声に出さなくても言葉が通じる。

誰にも言えない、寧ろ自分でも驚くようなお願い事にちょっと緊張しながらも、まぁ今日ぐらい夢見たっていいだろうなどと自分自身に平静を装う。


お参りを終えて端へ除ければ、後ろに続く人だかりは先ほどよりも増えていた。



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