Dear...
『…と、思うんだけどさ、』

その言葉には続きが有る。

『一人で死ぬのは、嫌だから、やっぱり死なないや』

軽々しく死を口にする中二病達とは違った。逆に、ある種の恐ろしさすら感じてしまう―狂気、と言うべきだろうか。

俺は、ずっと孝司の側にいた。
誰よりも、孝司を知っている。
孝司は、何処か遠くに行ってしまうのだ。死を孕んだ、何処か儚い微笑を浮かべたまま。

感情に名前を付けるのならば、友情というよりも、別の何か、愛情のようなものの方が相応しい気もして来る。嫉妬、だとか、独占欲、だとか。

同性である孝司にそんな感情を抱く自分も、はたから見ればきっと別の意味で狂気の沙汰なのだろうか。

俺は、孝司は、親友なのだから。

嗚呼、出来るならば、孝司が死ぬときに一緒に死ぬのは、俺が良いのに。
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