Dear...
「やったな、通過だ」
噛み締める様な吾妻の言葉に、頷いた。掲示された上位校の中に、しっかりとこの高校の名前があった。
「昼飯。食べちゃお」
ニカ、と笑って、荷物を置いている大道場に向かった。

そういえば、孝司以外と昼飯を食べるのは久しぶりの様な気がする。吾妻曰く、レア。お握りを口に運びながら、つまらない話をする。
…孝司以外の人間の言葉が、薄っぺらな物に聞こえる。
付き合いのそれなりに深い吾妻のような奴ならば、同じ薄っぺらでも嫌悪感は少ない。
しかし、どこにでも汚い奴は居るものだ。嫌になる程、見え透いた感情を持ってる人間ばかり。
…孝司の姿が、あの観衆の中にあったなら。
有る訳も無いことを考えてみる。まるで、初恋をした女みたいに、想像ばかりする。
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