Dear...
どうして、そんなに。

どうして、そんなにお前は優しい。

そう思ったら、言葉が堰を切って溢れ出した。必死で留めた唇から、零れてしまった一言。


「俺は、お前が、好きだよ」

一瞬驚いた顔をして、孝司は笑った。

「俺と両想いになったら死ぬんだぞ。やめとけやめとけ、ずっと俺の片想いで、十分。」

当たり前かも知れないけど、こいつ、冗談だと思ってる。好き、の意味が違う。

「…俺は…!」

「お前が死んだら俺も死ぬよ。これだけは本当。はは、十分両想いかな、」

「違う。…俺は、本当に孝司が」

「褒めても奢ってやる金ないからなー」

可笑しそうに笑って、孝司はペダルを漕いだ。夕焼けが、色の抜けた孝司の髪を赤く染めている。斜陽は俺と孝司の影を伸ばし延ばしていた。
< 49 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop