Dear...
「お前、」

「気持ち悪いか?俺。だったら忘れてよ、もう、いいよ。友達で、いよう」

無理矢理な笑みを浮かべて、ペダルを深く漕いだ。

「追い詰めてたのは、俺か」

聞こえない。孝司の声なんて、聞こえない。今だけは、聞きたくない。ああ、本当に死んでしまおうか。それならば、大通りに出て車道に突っ込んで行けば良い。あの作家のように踏切に横たわればいい。あの文学者のように、川に落ち行けばいい。

そもそも、これが愛だとかすらも怪しかったのだ。確かに愛せるのは一人だけに違いなかったが、そのあとはまるで道が無い。執着点が無い。男女なら、結婚するだとか離婚するだとか、始まりから終わりまで『正常』。道は最後まで舗装されている。

じゃあ、この感情は。
人類の発達上に生まれた、イレギュラーに過ぎないのに。
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