Dear...
「悠希だけは、安心できた」


トラックが通り過ぎると、青信号になっていた。ペダルを漕ぐ。

「母さんもああだし、カナちゃんは死んだ。父さんは好きだけど、遠い感じがする。多分さ、いつまで経っても俺には悠希しかいないんじゃないかって」

苦笑を漏らす悠希。付けた無数のアクセサリーが、赤い夕陽に照らされて煌めいている。孝司が、神々しく見えた。

「ホモもヘテロも、俺はこだわらないけど。悠希の他の他人は、怖かったんだよ、俺」

「どういう意味だよ」

「大切なものは握ってないとさらわれる。握っていれば潰れてしまう。最初から、俺が大切だったのは、多分、悠希なんだ」
< 54 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop