Dear...
…太陽の様だった孝司に陰を見るようになったのは何時だったか。いつもはケラケラ笑うし下品だし乱暴なのに、時折、何も見ていない様な虚ろな目をするのだ。そして、他人を完全に拒絶する。

そんな孝司が怖かったけれど、いつもの孝司に戻ったときの笑顔が好きだった。

「最初から陰気な奴だったよなー、悠希」
「うるせ」
軽く孝司の頭を小突く。昔から変わらない関係は、何よりも愛すべきものだった。

時たま考えるのだが、自分は一生結婚など出来ないのではないか、と思う。他人が嫌いで、近付かない、近づけないから。それでも良いと思った。孝司が、ずっと隣にいてくれたら、それで良い。世界に孝司だけが居れば良いのに。

「俺、今度バンドやるんだ、田辺ちゃんと真田と」
なのに、孝司は、俺は、少しずつ離れていく。お互いに自分の世界があって、その世界で暮らしていく様になる。

当然のことだ。何を悲しむ。
「聴きに、来いよ」
「……ああ。行くよ」
精一杯笑顔を作り、答えた。
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