愛しのマイ☆ドクター
『昨夜美羽ちゃん本人から依頼されました マデルンハイト症候群の治療をやめてターミナルケアに切り換えて欲しいとのことです・・・』



僕はできるだけ感情的にならないようにつとめて冷静な口調で言ってみた



『ターミナルケア・・・』



『はい・・・ 病気の治療を目的とせず心や体の苦痛を避けるために末期の患者さんや老衰のお年寄りに行う措置のことです・・・』



美羽のお母さんは僕の言葉を聞いてしばらく何も言わなかった



やがて彼女はうつむいて僕から顔をそらした



どうやら泣いているようだった



しかしそれもすぐに抑えたようで僕のほうをじっと見て問いかけてきた



『あの子が・・・それを望んでいるんですね・・・?』



『はい・・・』



『私が承諾すれば現在の治療からその・・・ターミナルケアに切り換えてくださるんですね?』



『いちおう院長の許可が必要ですが、口頭ではもう伝えてあります』



美羽のお母さんの目がまた潤んできた



それでもなんとか涙をこぼさずに我慢していた



本当に気丈な女性だと僕は感心してしまった



『じゃあ・・・早急に正式に院長先生の許可を得てください。あの子がそう願っているのですから・・・』



『わかりました。後で書類をお持ちしますのでご署名ください』



『・・・・・はい わかりました』



『では失礼します』



『先生・・・最後まで・・・あの子のこと・・・宜しくお願いします』



僕は自分自身が泣きそうになる前にお母さんの病室を出た



いよいよこのときが来てしまったのだ



強くならならければいけないと自分に言い聞かせた
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