碧色の君へ


そして海に向かって第三の理由を、言った。



「あともう一つ。…私、碧が好き。だから行きたくない」



パシャ、パシャ…

足を動かすたび、水が跳ねる音がした。



ふと振り向くと

碧はそこに立っていた。



「…振り向いちゃダメって言ったのに」


そう頬を膨らませても、碧はなんの反応もしなかった。

ただまっすぐと私を見つめていた。




海の向こうに夕陽が見える。

茜色に染まる頬と波。




…なんだか無性に今、あの部屋に帰りたいと思った。


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