キミに伝えたかった

それが、俺と美羽が出会って最初の出来事。

桜井美羽(サクライ ミウ)。
見た目からしてか弱い女の子って感じの女の子。

『竜樹は男の子なんだから、美羽ちゃんを守ってあげるのよ!』

美羽が来てからほぼ毎日母さんから聞かされてきた言葉。

学校に行く時はいつも一緒。
学校にいる時、クラスが同じだったから、授業も休み時間も一緒。
学校から帰る時も一緒。

美羽は寂しがり屋だから、二人でいる時は手をつないであげた。

美羽はすぐ泣く。
その時は美羽の頭を優しく撫でて、ぎゅって抱きしめると、美羽は安心した顔で笑うんだ。


上級生になってからもこの不思議な関係は続いていた。


「たっちゃん♪」

いつの間にか美羽からそう呼ばれていた。

いつものように、俺と美羽は手をつないで下校。
美羽の手はポカポカして、ずっと手をつないでいたいって思える。

「たっちゃん」

近所の公園の前を通り過ぎようとした時、不意に美羽が俺の名前を呼んだ。

ん?と、言いながら俺は美羽の方を見た。
美羽が俺に近づいて来たと思った瞬間だった。


─ちゅっ…


俺の唇に温かい何かが触れた。


「たっちゃん大好き♪」


唇から何かが離れたと思うと美羽は照れたように笑った。




小学6年生の秋…
俺のファーストキスは美羽に奪われた。




 
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