崖っぷち
「真姫〜!!」
朝から明るく眩しいくらいの笑顔であたしを呼ぶ声。
「おはよ♪」
小柄なくせにスタイルがめちゃめちゃいいこの子。
斉藤翼、20才。
もちろん彼氏持ち。
「おはよー」
朝は低血圧なあたしは普通に返す。
「ほらー。そんな暗い挨拶じゃ男にもてないよ!!」
軽い冗談で言ったつもりの翼。
けどそのフレーズ、今のあたしには禁句。
「もてなくていいもん」
半ばいじけ気味に返すと笑う翼。
「慎くんさへ振り向いてくれれば?」
「なっ…!!」
慎くん。
その名前を聞いて、あたしの顔は最高潮に紅く染まる。
「別に慎也とかどーでもいいし」
あたしは慌てて平然を装い言い返す。