崖っぷち
「何?俺がどーした?」
突然。
背後から聞こえた声にあたしの心臓は飛び跳ねる。
「慎くんおはよー♪」
翼が何事もなかったかのように挨拶をする。
「おはよ、翼ちゃん」
くしゃっと綺麗な顔を崩して慎也が言う。
自然に慎也があたしの隣に並んで歩き始める。
「で?」
しばらく歩いていると慎也があたしを覗き込む。
「俺がどした?」
「べっ……別に!!ね?翼?」
あたしは慌てて翼を見る。
だって、顔近すぎ。
目見つめすぎ。
心臓持たない……。
「別にぃ〜」
そんなあたしをにやにや笑いながら翼は言う。
「ただ慎くん彼女いないのかなぁって話してただけ」
「へ?」
「は?」
あたしと慎也の声が重なる。
何でこんなデタラメを……
疑問に思いながらもあたしは慎也の反応を待つ。
「それはイヤミか?翼ちゃん」
慎也が少しすねたように言う。
「先月ふられたって噂は本当なんだ」
翼が悪戯っぽく笑うと、慎也は反論する。
「俺がふったの!!」
あたしはただ、慎也に今彼女がいないことに喜んだ。
と同時に彼女が居たことに落ち込んだ。