心臓に悪い料理店

爽やかに笑い、ダニエルは先ほど逃げて行ってしまった客の皿を片付けようとテーブルに近付いた。
その時だった。


空を切る音がすぐ近くで聞こえ、何かが通り過ぎていくのが見えた。
背後から何か鈍い音と何かの呻きを耳にして、ダニエルは恐る恐る振り返った。

「ア、アルフレッド先輩……そ、それは……?」

鈍い音と呻きの正体を目にしたダニエルは一歩、身を退いた。

「……見ての通りのネズミだね……」

「こ、殺したんですか??」

「……まさか……。……急所は外したよ……」

口元にうっすらと笑みを浮かべ、アルフレッドは壁の前で倒れているネズミに近付いた。
そのネズミの身体には注射器が刺さっていた。
何故、注射器がここにと考えるより先に、アルフレッドが慣れた手つきで注射器とネズミを別々の袋に入れ始めた。

「あ、あの、アルフレッド先輩。それで何をするんですか?」

「……今日の特選素材だよ……」

「それは、俺が食べるんですか? それとも動物ですか?」

もう一歩後退し、ダニエルはアルフレッドに問いかけた。

「……どっちがいい……?」

滅多に微笑むことのないアルフレッドの笑みを見てしまったダニエルは、神の名を呟いたのだった。


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