心臓に悪い料理店
六話 とんでもない店員③ その2
「スティーブン先輩は、どうして魂が抜けたりするんですか?」
やっと身体に魂が戻り、机に突っ伏しているスティーブンにダニエルは尋ねた。
どうやら魂が抜けたり、戻ったりするだけで体力を消耗するようだ。
「それが分かったら、苦労しないんだけどなぁー」
そう呟いて、スティーブンは窓の外に目を遣る。
外はだんだんと薄暗くなり、明るい星々が我が物顔で輝き始めている。
「え? 分からないんですか?」
「分からないっていうか、これ遺伝だから」
「え、遺伝?」
「……遺伝と言っても、そこまで上がり症じゃないよね……。……君の家族」
クスリと口元に笑みを浮かべ、黒髪の青年がスティーブンの肩にナイフで軽く突いた。
「うるさい、どうせ、俺は極度の上がり症だよっ!」
すねたように言って、スティーブンは青年を睨んだ。
「言いたいことは分かったから、アルフレッド、ナイフで突くな!」
突かれた肩を押さえ、スティーブンは黒髪の青年アルフレッドに注意した。
注意されたアルフレッドは、ちっと聞こえるくらいの大きさで舌打ちをした。
「本当に大変ですね、スティーブン先輩!」
にこにことダニエルは、水がなみなみと入ったコップを机に置いた。
「そこ、笑うとこじゃねーぞ、ダニエル」
置かれたコップを持ち、スティーブンは水を一気に煽る。
「……本当に君って大変だよね。……その上がり症がなければ、付き合ってる彼女に告白出来るのに……」
アルフレッドの一言を聞いたスティーブンは、口の中に入っている水を一気に噴く。