心臓に悪い料理店
「「あ」」
二人同時に声を出し、呆然と間に落ちた手を凝視した。
「すみませ〜ん、就職が決まったことに嬉しくて気を抜いたら、手が落ちちゃいましたー」
あはは〜と笑うダニエルに、店長は苦笑しながら地面に落ちた彼の手を拾い、渡した。
「その特技面白いな〜。お前、ウェイター決定だな」
「え? もう決定ですか?! それにこの手、恐くないんですか?!」
自分の手を受け取り、ダニエルは平然としている店長に驚き、目を何度も瞬かせた。
いつも人がこの手を見たら必ず悲鳴を上げて、飛ぶように逃げていくのに、驚きもせず手を拾ってみせる強者な店長を呆然と見つめた。
「ああ。見慣れてるから。でも客が叫ぶだろうし、リストバンドか包帯かどちらかで支えておけよ。ところでお前、名前は?」
思い出したかのように店長はダニエルに問いかけた。
「ダニエルと言います! 今日からよろしくお願いします!!」
――それが、ダニエルと店長の出会いだった。
「あれから、俺、夢を変えたんですよ」
窓際に置いてある花に水やりをしながら、ダニエルは店長にそう言った。
「へぇー、どんな」
「皿を何枚持ったら手が落ちるか?! という記録でギ○スに載ろうということに!」
「……手が落ちるということで十分、ギ○スだぞ」