手紙
先輩の背中に腕をまわし
あたしは泣いた

きっとこれが最後…

先輩を想って泣くのも
先輩の前でこんなふうに泣くのも最後



先輩が離したあたしの手の中には
一枚の紙キレが残った

紙キレには…、先輩の新しい住所

夕日で照らされている廊下の奥へと
先輩の背中が消えていく

「……桐里せん…ぱ…ぃ」

頬に一筋の涙が流れた

そっと触れた耳がまだ熱い
先輩の最後の言葉がまだ耳の奥に残ってる

    ‘待ってる’
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