Don't leave
体を重ねた後

ソファーで2人ぴたりとくっついて、手を深く絡めキスばかりしていた。


とりとめのない話をしていたのだけれど、なぜか彼の過去の話になって。


私は、彼の壮絶な過去を聞いた。


成人した子供が3人いることから始まり、奥さんと離婚した経緯や、子供の事で、とある事件に巻き込まれた事。

借金の事。


なんか…


こんなに明るくて前向きで強い人が、そんな過去を持っているんだと思うと、苦しくなった。


なのに彼は笑う。


「そりゃああの時は必死で必死で…気が狂うかと思ったけどね。…こんな話、恥ずかしくて誰にも出来ない。結子だから話せたんだからね。」




つかささん。


あなたの強さは、あなたが過酷な出来事に負けずに走り抜いてきた賜物。

あなたの眩しさは、その壮絶な暗い経験をバネにさらに輝いて見えるもの。


どれだけの苦労をしたんだろう。

想像もつかない。


ただ、今は穏やかに笑うその笑顔の裏には、今も私に見せない言わない悩みや辛い事が山ほどあるはずで。


社長という立場がどれだけ重いものか。


どれだけの思いで毎日を過ごしてる?





「…………」



そっと手を伸ばす。


つかささんの暖かい頬に、両手を添える。


何度も撫でる。


せめて私といる時は心穏やかに、嫌な事や悩み全部忘れられるようにしてあげたい。



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