Don't leave
それから高校卒業後…数年間は、

社会人として営業サポート兼事務をやって。


あの頃は割と楽しかった。



なるべく家にいないようにしていれば、


あんな男と顔を付き合わせずに済む。


よくもまあ一つ屋根の下に加害者と被害者が、

お互いに何でもない顔して、

父親と娘として生きていけるよね…と、笑いがこみ上げる。


もっとも、この胸に巣くう闇と消えない憎しみは誰も知らないけどね。



趣味でやってたボランティア仲間と、頻繁にボランティア活動をしたり、時にはボランティア抜きの遊びに行ったりしていた。

彼氏とも順調だったけど結局別れて、

仕事もその後2回変わって…


と、


少しずつ、変化して行った。






そんな時に旦那と知り合った。


今考えると何であんなに夢中になっていたのか分からないけれど、


人は自分にないものを持つ人に惹かれる。


旦那と私も

例外なくそのパターンだったに違いない。


考え方や相性や、共通の趣味に関しては壊滅的だったこと、あの頃は気付いてなかったけど。



旦那は借金の取り立てをやったり大工をしたり、正体不明な人だった。



暴走族の総長をやっていたと聞いた時は、
私とは住む世界が違うと思ったし。



でもなぜだか私達はお互い疲れるのに離れられなくて。


旦那が突然ヤクザになったり、


…本当に色々あって。



きっと私は人生を諦めていたんだろうな。


どこか投げやりになっていたんだろうな。



色んな小さな問題が少しずつ積み重なって、大きな悩みに変わった時、

何もかもが嫌になって、

私は旦那に死にたいと言ったんだ。




私達は駆け落ちみたいにして遠くの地へ行き、



自殺を計った。



でも今考えればあんな安易な自殺で人が死ねるなら、自殺者の数はもっともっと多いはず。



今でも残る、薄い薄い傷。

手首のそれは、私に命の重みを今も…
教えてくれるんだ。



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