Don't leave
店のお客であり、同時に、姐さんの学生時代からの友達である、ホストに私は恋していた。


きっと言動があちこちおかしかったんだろう。


目撃証言まで出されて私は言い返す言葉もなかった。


散々旦那と修羅場を繰り広げた後、


私は部屋を飛び出して彼の部屋へ逃げ込んだ。



帰らないつもりで。



冷静に考えると、私は本当にどうかしてたと笑いたくなるけど、


あんな中生活してきた私の精神状態で、
私がそんな行動に走ったのは、
私の弱さを考えるとごく自然だった気はする。



帰らないつもりの私に、躍起になる旦那と姐さんと兄さんと舎弟仲間。スナックのママに先輩方。

私達に味方なんかいないのは当然で。



翌日、私は連れ戻され、彼は私の目の前で旦那と兄さんに半殺しにされた。



『結子。…アイツを悲しませるな。』



兄さんに軽く叩かれた頬の熱がなかなか消えなくて。


『結子、目をさましなさい。アイツは結子みたいな子が好きになる価値のない男だよ?』


姐さんの声が耳から離れなかった。




私は心を閉ざした。


旦那が腫れ物に触るように私の機嫌を伺うみたいに接してくる。


私は旦那に酷く冷たく当たった。



…でもしばらくして傷が癒えてくると、酷い事してる自覚が出て来て。


私は旦那に謝り、私達の仲は元通りになったかのように見えた。


でも今度は別の問題が勃発した。

組の方針で旦那を事務所に住まわす事にするとか何とか。

旦那は私と離れる事に怯え、逃げる事を提案して来た。


私の給料日を待って、必要最低限の手荷物だけを持って、深夜に逃げ出した。

車と新幹線を使って遠く離れた所へ。


別に死のうとしたワケではない。



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