FAKE LIFE
「進路は、本人に聞きなさい。だいたい、まだ斉藤の進路指導はやってないんだよ」

それは事実だった。斉藤キョウコの進路指導は、まだこの後だ。
リュウタは懇願するように手をすり合わせた。

「せんせー。直接聞けるんなら先生に聞かないっすよ。ね、この通り!」

リュウタの仕草は可愛らしかったが、生徒の進路を勝手に漏らすわけにはいかない。
そもそも、ハルキはキョウコの進路を知らなかった。
生徒は大勢いる。
進路調査表は、書いて提出したかは確認しても、まだその内容まで覚えていなかった。

「なんで斉藤の進路が知りたいんだ?」

ハルキは言ってからちょっと意地悪な言い方をしたかな、と後悔した。
それこそ余計なお世話だ。
しかし、リュウタは屈託なく笑いながら答えた。

「気になるから」

ハルキはリョウタのその素直さが羨ましいと思った。
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