FAKE LIFE
斉藤キョウコの進路指導は、今日の指導生徒の中の一番最後だった。
キョウコは指定の時間よりも、少し遅れてきた。
走ってきたのか、頬が紅潮している。
白いブラウスが包む薄い胸が、かすかに上下していた。

「せんせっ。お待たせしましたっ」

キョウコは口数は少ないが、弾けるような話し方が可愛い女の子だった。
短すぎない程度ミニにしたスカートに、紺色のハイソックス。
マキが高校生だった頃のことを思い出す。

「斉藤キョウコ、進路希望は…」

進路希望調査表に視線を落とすと、ハルキは驚いた。
そこには、存在しない大学の学校名。
中身まできちんと見ていなかった、これはオレの落ち度だ、とハルキは思った。

「斉藤、これは何だ?」

ハルキは何も準備していなかった自分を悔やみながら、キョウコになるべく優しく話しかける。
キョウコはいつも熱心に授業を聞いているし、小テストの結果から見ても、予習もきちんとしているようだ。

だからこれは、ハルキにとってはフイ打ちだった。
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