FAKE LIFE
キョウコは下を向いたまま、ムッツリと黙っている。
ハルキがアレコレ話しかけても、口を開かない。
リュウタの言う「気になる」とは、こういう意味だったのだろうか…。
リュウタは何かを知っていたのだろうか。

いたずらに時間ばかりが進み、ハルキはこれは後日に持ち越したほうがいいかと考え始めていた。
進路指導室の窓から見える景色が、オレンジから紺色へと変化していく。

「とりあえず、今日はもう帰りなさい。また後日、きちんと話しをしよう」

「せんせぇ…。あのっ…」

それまで押し黙っていたキョウコが、弾けるように顔をあげた。
その目には、迷いの色。

ハルキは黙ってキョウコの様子を見ることにした。
進路について、ずっと悩んでいたのだろう。
彼女は何か大事なことを打ち明けようとしている。
オレはその言葉を聞いて、彼女を正しい道へと導かなくてはならない。

「せんせぇっ。あのっ…!」

キョウコはしばらく言いよどんでいたが、ついに覚悟を決めたようだ。
ハルキの目をしっかりと見つめて、言った。

「せんせっ。あたしと…結婚してださいっ!」
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