FAKE LIFE
告白
予備校の教室には、思春期の子どもが持つ、特有の香りが充満していると思う。
今日のように子どもたちにとって重要な「進路指導」のある日は、特になんとなく教室が熱を帯びているように感じる。

ハルキは今日の分の講義を終えると、書類を用意して進路指導室へと向かう。
今日はハルキが担当している、高校3年生・現役生コースの進路指導の日だ。
今日の指導は、この重要な夏の夏期講習のコース決めの参考ともなる。

ハルキは気を引き締めた。
子どもたちの進路と向かい合う時にはいつも、彼らの将来に関わっているのだという気持ちで不安な気持ちになってしまう。
自分の一言が、人の未来に影響を与える。
思えばこれはとても怖いことではないか。

何年経っても、慣れないのかな。
ハルキは自嘲気味に思う。
夢が叶ったら、本当に幸せになれるのだろうか?
同じようにオレが指導して、夢を叶えたマキは、幸せなのだろうか。

ハルキはまだ知らなかった。
今日の進路指導が、今の生活を変える未来をもたらすことを。
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