Love and you



「・・帰りたくないです」


咄嗟に出た言葉に、自分自身驚いた。


学生を終えてから、男性に対してこんなわがままを言ったのは初めてだ。



立ち上がった課長を上目づかいで見つめる。


「とりあえず出ようか」困ったように笑ってあたしの頭を撫でた。


断られちゃったかな、なんて少し落ち込んで
少し正気に戻った気がした。


「2軒目行く?」

バーを出たとこで、課長がそういった。


「・・わがまま言ってすみません。課長疲れてるのに・・帰りますね」


ちゃんと笑えていただろうか、ふと思ったのを覚えている。



前を向いた瞬間、課長の香水の香りが鼻を通った。
抱きしめられていると理解するのに、少し時間がかかった。



「・・課長」

「三上君にそんな顔されたら、こうする以外どうすればいいのかな」



ただつらくて、さみしいだけの恋。

だけどどんどん夢中になっていた。

会社での完璧なあなたが、弱みを見せてくれて愛してくれて。

もう引き返せないこともちゃんとわかっていた。



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