Love and you
気付けば自分が降りる駅で、慌てて渡辺健人の手を引き、電車を降りた。
「あっぶなーい、降り損ねるとこだった」
「ちょっと夢中に話しすぎちゃいました〜」
よろよろと渡辺健人はそのまま私の手を握り、改札口を目指す。
「渡辺くん、調子のらないの」
握られた手を離そうとするが、渡辺健人は離さない。
「ちょっと」
少し強めに言うと、くるりと振りかえり、
「亜紀さんちまで、お願い」
私の手を握ったまま、渡辺健人は自分の顔の前で手を合わせた。
「そんな時くらい、手、離しなさいよね」
その仕草に少し笑えて、手ぐらいまあいいかと手を繋いだまま歩き出す。