魚住の生き方
雨はずっと、しとしとと降っていた。待つ、という選択肢は外した。どうせ、ただの散歩だからと、自分に言い訳しながら、階段を降りていると、六十歳過ぎのおじさんと目が合った。大家さん?と思って軽く会釈した。おじさんは、短髪の白髪で、小太りで、ジャージを履いていて、見るからに大家という感じだった。おじさんは私の方に近づいてきて「達也はいねえよ」と大きな声で言った。
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