魚住の生き方
それでもその空いた空間に、缶ジュースを置き、「どうぞ」と言った。その缶ジュースは古びた空間にたった一つだけ現代的で、一人で戦っているように見えた。でも、それはどう見てもただの缶ジュースだった。私はパンという音をたててスプリングを開け、なんて気持ちの良い音なんだろうと思いながら口をつけた。みかんの味がした。現代的なパッケージに田舎くさいみかん味。私と同じだ。
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