魚住の生き方
上の方で、ドンドンと足音がして、大家さんが「帰ってきたよ。本当にすぐだっただろ」と言った。私は、お礼を言って、残りのみかんを飲み干した。魚住の気配は、台所から隣の部屋、そして寝室へと移っていった。寝室。私たちが寝たところ。その場所を下から見上げて、私の声も聞こえたんだろうかと思った。「大家は留守なんだ」と魚住は言った。昨日の出来事だ。もしもあの時間、大家さんがここに居たらと思うと恥ずかしくなって、大家をちらっと見た。目が笑っているようにも見えた。
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