魚住の生き方
魚住の部屋に入ると、良い香がした。私の顔を見ても、たいして驚いた様子もなく、「いらっしゃい」と言った。「下で待ってたんだ」と言うと、「そうなんだ」と言った。私が大家と何を話したかなんて、気にならないらしい。「大家さん、昨日留守だったんだよね?」と念を押すと「ああ、たぶん」と言った。いい加減なやつ。とても重要なことのような気がするんだけど。でも、仕方ない。過ぎたことは元に戻せない。それに私のあえぎ声なんて、たいしたことないんだから。