そのオトコ、要注意。
見上げると視線がぶつかった。
「やっぱり見せつけられた分は返さないと。相手にも失礼でしょ」
意味不明なんですけど。
やっぱりってなんですか、『やっぱり』って。
要するに、あれですか。男のプライドとか言うヤツですか。
(…そんなもん、犬にでも喰われてしまえ!)
しかも相手って誰だそれ。
頭の中で唸っていたら、頭上から小さな笑い声。
「面白いこと言う子だね、君は。彼が目を掛ける理由がわかる気がする」
…どうやら、ココロの声は駄々漏れだったらしい。
また、やってしまった…。
うなだれるあたしを尻目にこのあとが楽しみだ、と嫌に機嫌の良いこの男。
同時に再び階段を降りはじめる。
周りにはチラホラと生徒の姿が。
そろそろ下ろしてもらわないと本格的にマズイ。
「あたし、ホントにもう大丈夫ですから。あなたにこんなふうにしてもらわなくても歩けます。お願いします、下ろしてください」
さっきまでの態度を改め、丁寧に頼んだ。
…なのに。
「ヤだ」
『イヤ』だとぉーう?
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