そのオトコ、要注意。
「もういいです!自力で下りさせてもらいますからッ」
胸を押して身を捩るが思ったより効果がない。
というより、全然びくともしない。
そうしている間に階段から2学年の教室が並ぶ廊下についてしまった。
周りの同級生たちがあたしたちを見て、ザワザワとしている。
(……っ、だからヤだったのにーぃ!)
「お・ろ・し・てッ!」
今からでも遅くないとさらに足や腕をバタバタさせる。
そんなあたしを一瞥して。
「そんなに暴れると下着が見えるよ。気にしないなら別にいいけど」
急に耳元で囁かれる。
慌ててスカートの裾を押さえた。
この人の言いなりになったのは癪だけど、パンツには変えられない!
「君、随分な暴れ馬みたいだけど。彼はしっかり乗りこなしてるのかな」
「…?あなた、なに言って――」
ぽつりと零した言葉の真意は図れなくて。
「さっきから言おうと思ってたんだけど。俺は『あなた』じゃなくて、『藤代祥弥』だから」
という訳でこれからもよろしくね、なんて胡散臭さ満点の笑みで微笑まれても全然嬉しくない。
よろしくするつもりもありませんから、コッチは!
だから早くあたしを下ろしてくれ!
.