そのオトコ、要注意。
【ルイSIDE】
まさか。
見たときは目を疑った。
なんであいつが、ここに。
誰かの差し金か、否か。
はたまた自分の意思か。
それを知る術は、今はない。
それに…―――
俺を凝視する一人の少女。
なにをそんなに必死に覗き込む必要があるのかと、彼女の様子に吹き出しそうになる。
だが、同時にその無垢で真っ直ぐな瞳は、この胸の内までも見透かしてしまいそうで、……怖くもある。
それよりも――
今は彼女に話を聞くよりも、先刻俺を見て微かに笑みを浮かべたあの男に問いただすのが正解だろう。
たぶんあの様子じゃ、な。
俺は席を離れ、すれ違いざまに彼女を見た。
以前から思っていたが……―――
キョトンと黒いクリッとした目を瞬かせる彼女は、ことの前兆に全く気づいた様子もない。
――それでいい、…今はまだ。
俺は前を見据え、ヤツを追いかけた。
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