そのオトコ、要注意。

教室を出た瞬間に色めき立つ女達。

その甲高い声に思わず耳を塞いでしまいたくなる。

正直、今構ってやれるほどの余裕も時間もない。


(どこだ、あいつは。まだ、そう遠くには…)


もうすぐ本鈴が鳴るというのに、まだ多くの者が廊下に残っている中、視線をさ迷わせていると、前方突き当たりを曲がろうとしている男が見えた。


――いた。

後ろ姿しか確認できなかったが、俺にはそれだけで十分だった。


男はちょうど角を右に曲がって行った。

見失うわけにもいかず、俺は後を追った。



しばらく様子を見て、どこで姿を現すか、タイミングを図っていたら。
二つ先の角を曲がった直後だった。


――グイッ


!?



.
< 109 / 142 >

この作品をシェア

pagetop