そのオトコ、要注意。

距離が縮まる瞬間(トキ)



いよいよ明日が学園祭当日。
前日の今日は、最後の詰めだけあって朝からなかなか忙しい。


あの日から有栖川ルイはなんだか変わってしまった。
あの教室を飛び出したっきり戻って来なかった日から。

クラスメイトの話によると、その後早退していたらしい。


「おい」

だって、……変。
あいつが―――


「…おい」

「ひぃッ!?えっ、ななに、あたし?」

急に頭を小突かれて、女のカケラもない奇声を発してしまった。


「だからさっきっから呼んでんだろが」

気付け、あほ、と暴言を吐くこの男をまじまじと見てしまう。


だってだって!
ここ、教室デスヨ?

今までのあなたは表ではキラキラ王子様、やってましたと思うんですが。


なのに、今目の前にいる人は……

「お前、明日本番だってわかってる?」

何て言うか…

「主役のお前がそんなんでどうするワケ?」


――なんだってそんなスパルタなんだ!

まぁ、さっきからNGを出し続けているあたしもあたしかもしれないけど。


だけど、どーしてもッ!
あたしからハグ!…なんて出来ないんですもん!


.
< 111 / 142 >

この作品をシェア

pagetop