そのオトコ、要注意。
距離が縮まる瞬間(トキ)
いよいよ明日が学園祭当日。
前日の今日は、最後の詰めだけあって朝からなかなか忙しい。
あの日から有栖川ルイはなんだか変わってしまった。
あの教室を飛び出したっきり戻って来なかった日から。
クラスメイトの話によると、その後早退していたらしい。
「おい」
だって、……変。
あいつが―――
「…おい」
「ひぃッ!?えっ、ななに、あたし?」
急に頭を小突かれて、女のカケラもない奇声を発してしまった。
「だからさっきっから呼んでんだろが」
気付け、あほ、と暴言を吐くこの男をまじまじと見てしまう。
だってだって!
ここ、教室デスヨ?
今までのあなたは表ではキラキラ王子様、やってましたと思うんですが。
なのに、今目の前にいる人は……
「お前、明日本番だってわかってる?」
何て言うか…
「主役のお前がそんなんでどうするワケ?」
――なんだってそんなスパルタなんだ!
まぁ、さっきからNGを出し続けているあたしもあたしかもしれないけど。
だけど、どーしてもッ!
あたしからハグ!…なんて出来ないんですもん!
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