そのオトコ、要注意。


思えば、転入当初からころころと人が変わったように態度が一変している。


――まるで、そうならなければいけない理由があるかのように。


「ガバッと来ればいいだけだろ」

何をそんな難しがるんだか、と軽くため息をつく。


「……白雪姫がそんなにがっついてちゃ、問題じゃない…?」

あたしがボソボソとそう指摘すると、また呆れられてしまった。


「誰も舞台でやれと言ってない。一回そういうつもりでやってみろ、…って言ってんの」

今ここで、と言われた瞬間図らずも固まってしまった。

有栖川ルイを見ると、信じ固いことに両手を広げている。


(こ、これは……?)

「…え、っと……?」

あたしは夢でも見ているんだろうか。
ひょっとしてまだベッドの中とか?

思わず目を擦る。
……何も変わらない。

周囲はもう準備を続けるのを諦めたようだ。
作業そっちのけでギャラリーと化している。

(…こんな中で、どうしろっていうのよ……っ)

クラスメイト達に助けを求めるも、何も言わず、見ないふりを決め込んでいるらしく、ニマニマと質の悪い笑顔を返されるだけ。

さらには目で何かを語りかけているような、訴えているような。

内容はわかりたくない、たぶん。


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