そのオトコ、要注意。
再び静寂に包まれる。
藤代祥弥が出て行ってからというものの、目の前の彼はどこか難しいような苦々しい顔つきをしていた。
「ねぇ」
声をかけることも憚られたが、沈黙に耐え兼ねてそれを破ると、意外にも反応を示してくれた。
「そういや、何か話あるんだったな」
なんだ、と向き直ってくれる彼は、先程までの藤代祥弥に対して向けていた冷酷な態度は微塵も感じられなかった。
ホッとするのと同時、拭いきれない不安に駆られる。
垣間見えたとてつもない大きな何かに、いつか目の前のこの人は飲み込まれてしまうのではないか。
何故かそんな考えが胸を過ぎった瞬間。
――ギュッ。
「!?」
あたしは、思いっきり有栖川ルイを抱きしめたんだ―――
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