そのオトコ、要注意。


俺はただ、彼女の息遣いと心臓の鼓動を感じながら、あの日に想いを巡らせていた―――



†††


「ルイくん、本日は本当におめでとう!」

「御子息がこんなに立派に成長なされて、御両親もさぞお喜びのことでしょうな」


「…ありがとうございます」


笑顔で祝言に応じる。

…そうすれば、奴らは大方喜ぶのだから。



誕生日は嫌いだ。
こんな無駄に盛大な場に担ぎ出されて、顔すら覚えたくもない奴らから上辺だけの祝辞を受ける。
俺はそれにいつしか身につけた仮面で恭しく対応する。


「御祝いついで、と言ってはなんですが…。うちの娘もルイくんを祝いたいとの様子で。是非とも会ってやって頂けませんか」

「うちの娘もご紹介させて頂けないだろうか」

「是非うちの娘とも遊んでやって下さい」


(……また、か)

お世辞を並べ立てた挨拶の後は、せっせと娘の売り込み。
どうせ親と同じで、俺の家柄や外見にしか興味ない女ばかり。


さっき、親同伴で直に連れて来られた女とみんな一緒。

こんな世界、もうとっくに飽きた。


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