そのオトコ、要注意。
ぽつん、と一人残された部屋。
遠くからの喧騒はそのままに、もの静かな室内になんだか寂しさを覚える。
そんな中、しばらくは文字通りポカンとしていたあたしだが……。
頭の内側では超高速にフラッシュバックしていた。
(な、何した!あたし!?)
当然、自分がやらかしたことを都合よく忘れられるはずもなく。
(何を自らその気になって…!)
思い出すは、先程の自分の大胆、……通り越して痴態とも言える行動。
独りよがりな不安に駆られ、思わず抱き着き。
寄る顔には何を思ったのか、受け入れるように瞳を閉じる。
もはや悶絶死しそうだ。
あああぁーー…!、と一通り悶えたあと。
漸く、つたない自制心により正気が戻ってきた。
(………、)
唇にそっと触れる。
(キス……か)
いつかのファーストキスを思い出す。
あの時は心底憤ったし、自分の迂闊さを呪ったりもしたけど。
気持ちを自覚した今では、嫌なんて感情が見つからないことに少し驚く。
(…でも、あれは―――)
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