そのオトコ、要注意。


再び廊下に目を向けると、―――やっぱりいた。

(……出たな、あやつめ)


そこには白雪姫のパートナー、麗しの王子様がいた。

しかも、後ろに女共を侍らせてやがるときた。

(あははは……。口悪い正体はさらしても、本質は変わらないってか)

澄ました顔に無性に腹が立つ。

そうこうしてるうちに、有栖川ルイがあたしの許まで来ていた。


「ああ、やけに人が集まってるかと思ったら、お前か」

仰ぎ見ると、マントが様になる、今時外人さんでもここまで着こなす人はいないだろうという、実に完璧な出で立ちをした王子様が鎮座していた。

すぐ後ろを見遣ると、少し離れたところからこちらにじとっとした視線を送る彼女たち。
それには、あたしに対する嘲笑やら蔑視が多分に含まれているとひしひしと感じた。


「…だから、あたしはパンダじゃないっての」

ぶつぶつ言いながら食べるあたしに、有栖川ルイは「は?」となんとも無粋な反応をする。


「……。それより、何でお前一人なんだ」

室内をさりげなく見渡す仕種に、言外に環奈のことかと解ると同時に、内心焦る。


間違っても、食べ物に目が行き過ぎて見失ったなんて言えない。言っちゃいけない…。


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