そのオトコ、要注意。


知らぬ存ぜぬ……、

「それに、全部お前が食うのか、それ」

知らぬ存ぜぬ………、

「やめとけ。太る。お前じゃなくて衣装が可哀相だ」

………………。

「演じられる白雪姫も迷惑千万だな」


…ぶちィ!!


「………こっちが口滑らせないように黙って聞いていれば。だいたいあんただって、さっきのアレなによ!あんなの……!あんなの、台本になかったはずでしょうが!それをあんたって男は…!ふざけんのもいい加減にしなさいよ!………………あ、」

道行く人々は最早固まっていた。

いきり立つまでだったあたしの闘志は、呆気なく萎んでいく。


(あわわわわ…!や、やってしまった……)

今度はオロオロと慌て出したあたしに、小馬鹿にしたような笑い声が響いた。


(くっ……!悔しい…!)


ついこの間自覚したばかりだけど……。
あたしは本当にこの男が好きなのだろうか。

(何かの間違いじゃなかろうか…)


目の前で憎らしく笑う男を見ていると、本気でそう思えてくる。


「くっ、ははは……!」

「………………………」


小憎らしい。



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