そのオトコ、要注意。

あたしがぶつぶつ文句を言っていると、有栖川ルイは不思議そうな顔をしてあたしを見ていた。

その注意を削ぐように横槍が入る。

「ルイくぅ〜ん、もう行こうよ〜」

甘ったるい声と絡み付く腕。

うん、あたしには出来ない。無理。なんかもう…、勝手にやってくれ。


有栖川ルイは薄く笑みながらそれらを軽くいなすと。

「一人ならお前も来るか」

「……はい?」

突拍子もないことを言われ、我に返る。

腕を引っ張っていた子と他の取り巻きの顔が、驚きで歪む。

「どうせ西森とはぐれたかなんかなんだろ」

「…っ、」

「…図星、みたいだな。なら、俺といたほうが確実に見つかる」

(え…、)

見上げると視線がかち合う。
深い青がこちらを真っ直ぐ射抜き、私は馬鹿みたいに固まる。


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