そのオトコ、要注意。


と、そこへ――

「あっ!やっぱりいたぁ!」

「へ?」

人混みからひょいと環奈が現れた。


「もー…、すごい探したんだから。みんなが有栖川君と一緒だなんていうから、まさかとは思ったけど…」

ほんとに一緒にいたのね、と半ば呆れたようにため息をついた。

「でもそのお陰で見つけられたんだけど…」

「よくここにいるってわかったね?」

環奈ってやっぱりエスパーなんじゃ…、と慄くと、間髪入れずに「バカ」とツッコミが入る辺りはさすがだ。


「主役が揃えば、何かと人は騒ぎ立てるもんよ。――って、あれ。有栖川君は?」

「……へ?そこにい、…ない」

見るとすでに姿はなくて。
どうやら御一行共々消えたらしい。どうにも抜け目がない。彼も、…彼女らも。


「…ほんと。掴めない男よね、彼って」

頑張んなさいよ、あんたも、と妙なエールを送られて、ふと気がついた。

「それ、どういう…」

なんだか嫌な汗がツ――…、とするような……。

ぎこちない笑みのあたしとは対照的に、それはそれは綺麗に微笑んだ。


「あたしがあんたの変化に気づかないとでも?」


そう言って極上の微笑みを浮かべた環奈に、黙って白旗を上げるしかないのであった――。


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